国際高専:国際高等専門学校

炭素繊維で機体の軽量・強度化を実現。
飛行ロボコン・マルチコプター部門初優勝

Team "Kibou" wins the Multicopter Division of Flight RoboCon!

機械工学科卒研チーム「希望」/ Team ”Kibou”

国際高専機械工学科の5年生4人でつくるチーム「希望」が、2018年9月、第14回全日本学生室内飛行ロボットコンテスト・マルチコプター部門に出場し、大学生や大学院生のチームを抑えて初優勝を飾りました。予選と決勝を通じてすべてのチャレンジに成功し、満点を獲得した見事なフライトを可能にした秘訣とは何だったのでしょうか。チームメンバーに話を聞きました。

左から又村さん、馳さん、伊藤教授、菊田さん、小西さん

左から又村さん、馳さん、伊藤教授、菊田さん、小西さん


チーム「希望」
菊田有昭さん:フレーム制作、パイロット担当
小西歩さん:制御プログラム、タイムキーパー担当
馳陽大さん:フレーム制作、操縦補助・指示担当
又村峰裕さん:制御プログラム、操縦補助・指示担当

―機体の特徴や、独自のアイデアなどを教えてください。

 何といっても機体のフレームにカーボン、正式にはCarbon Fiber Reinforced Plastic (炭素繊維強化プラスチック)、略してCFRPというものですが、これを使用したことに尽きます。軽いうえに強度が高いので、飛行機や自動車のボディ、自転車のパーツなどにも使われています。

小西 ベニヤ板や3Dプリンターも試しましたが、高いところから落下すると壊れてしまうんです。大会では機体重量の上限が決まっているので、軽くて丈夫なカーボンはうってつけの素材でした。カーボンをカットできるレーザーカッターがあることも、幸いでした。

 ただ、板状のカーボンは硬くて繊維が細かく、レーザーカッターでも切れませんでした。そこで、カーボンクロスという布状のカーボンを使うことを思いつきました。クロスをフレームの形に合わせてレーザーカッターでカットし、何枚か重ねてエポキシ樹脂という接着剤のようなもので固め、圧縮すれば、板状のカーボンと同じような状態にすることができます。部分ごとに枚数を変えられるので、必要なところだけ厚くして、重量をできるだけ軽くすることもできました。

菊田 フレームを軽くできた分、バッテリーやプロペラを大きくできたので、推力が増えて荷物を一気に運べますし、機体を安定して飛行させることにもつながりました。大会では僕が操縦を担当したのですが、おかげでほとんどトラブルもなく、スムーズに操縦ができました。

小西 細かいところでは、テールランプを付けて離れたところでも進行方向がわかりやすいよう工夫しました。

見た目はビニールシートのようなカーボンクロスだが、その強度は高く、重ねて固めることでより強度を増す

チキンラーメンを特定の台に運ぶ「高所物資運搬」、人形を指定エリア内に運ぶ「大型物資運搬」、「8の字飛行」の3つのミッションに成功しました。

 高所物資運搬のミッションでは、高さ2メートルの3つの台があり、正解の印がある台にチキンラーメンを入れなければならないのですが、機体に取り付けたカメラで上空から確認しないと正解がわからないようになっています。僕たちのチームでは、撮影した画像をメモリーカードに保存し、いったんスタート地点まで機体を戻して、確実に画像を確認する方法を取りました。無線などを使って機体から画像を転送させるチームが多かったですが、会場はいろんな電波が入り乱れていたため、トラブルもあったようです。

小西 チキンラーメンを機体から落とす機構もなるべくシンプルにし、角度を制御するサーボモータを使って着実に台に落とせるよう工夫しました。

菊田 今回は、手動で操作できる部分を確実に成功させることに集中しました。残りの2つのミッションは自律制御で行うもので、現時点では技術的に難しかったんです。結果として、挑戦したミッションはすべて成功させられたので、判断は間違っていなかったと思っています。

レーザーカッターでベニヤ板をカットして型枠を作り、カーボンクロスを重ねてフレームの部品を製作した

機体が軽い分、プロペラを大きくでき、ミニサイズのチキンラーメン4つも一度に楽に運べるように

機体が軽い分、プロペラを大きくでき、ミニサイズのチキンラーメン4つを一度に楽に運ぶことができる

―苦労した点は何ですか?

小西 マルチコプターは、バランスが崩れると飛べないので、フライトコントローラーというコンピュータを取り付けて制御するのですが、そのプログラミングが地道な作業でした。数値を何度も入れ替えて、トライ&エラーの繰り返しでした。

又村 制御で困ったときは、伊藤先生が頼りになりました。先生はドローンを自作されていて、制御プログラミングにも詳しいので、的確なアドバイスをくれました。チキンラーメンを取り付けると傾いてしまうのを、操縦で修正しようとしていたのですが、自動的にバランスを取って元に戻る制御を教えてもらい、操縦が格段に安定しました。

 フレーム製作の方では、カーボンクロスをカットするのが難関でした。見た目は薄いビニールのようなものですが、レーザーカッターの出力を最大にして、やっと切ることができます。レーザーカッターがないととてもできない作業なので、設備面で恵まれたことにも感謝です。

―大会を通じて得られたもの、感想など聞かせてください。

菊田 4月から皆で協力して一つのものを作るという経験を通して、やはりチームワークの大切さを改めて確認しました。来春には社会人となりますが、会社でもチームでの仕事があると思うので、チームワーク、コミュニケーションを活かしていきたいです。

小西 僕は制御を担当して、わからないことを調べる時に、情報が少なくて苦労しました。ネットの動画などを参考にして、自分で解決しなければならないことが多かったです。自ら考えて課題を解決していった経験は、自信になりました。

又村 僕は小西君とペアで制御を担当していたので、助け合いながら作業をすることで効率よく作業が進められました。意見が食い違うこともありましたが、しっかりコミュニケーションを取ることで乗り越えることができました。

 カーボンを使ったモノづくりの経験値を得られたことは大きかったです。それから、皆で一つのことを成し遂げた達成感。基本に忠実に、一つひとつやるべきことをやって、結果として大会で優勝できたことは本当にうれしかったです。

研究室での様子。クラスメイトとして4年以上を共に過ごし、互いへの信頼は厚いという

最後に、後輩へのアドバイスをお願いします。

 今回、カーボンを使った機体の有効性を僕たちが実証したので、次からはカーボンの機体が増えるでしょう。そうなると、ミッションへのチャレンジもレベルを上げなければならず、競技全体のレベルが上がっていくと思います。

菊田 僕たちは今回、自律制御のミッションを断念したので、後輩にはそこをぜひがんばってもらいたいですね。

会場にて。予選、本選を通じて、自分たちのやるべきことを着実に成し遂げたことが優勝につながった

HOMEReport from the Lab飛行ロボコン チーム「希望」

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