国際高専:国際高等専門学校

IoTで叶える
未来のまちづくり

 

Bus Stop Project by Sode Lab

袖 美樹子 准教授/ Associate Professor Mikiko Sode

袖美樹子准教授が指導する、国際高専と金沢工業大学の学生による研究グループ「Bus Stopプロジェクト」が開発した「賢いバス停システム」が、平成30年5月、IoTのインターネットシステムの優れた活用事例として評価され、YRP研究開発推進協会(YRP協会)の「WSN-IoT AWARD 2018」奨励賞を受賞しました。ほかにも地域と連携し、さまざまなプロジェクトを推進する袖先生の研究室を訪ねました。

袖 美樹子
国際高等専門学校 准教授

金沢工業大学情報工学科卒。(株)日本電気、(株)NECエレクトロニクス、(株)ルネサスエレクトロニクスに勤務。早稲田大学大学院基幹理工学科研究科博士後期課程修了。平成26年金沢工業大学准教授を経て、平成29年4月、本校准教授就任。

―「賢いバス停」とはどんなバス停ですか?

 「賢いバス停」とは、タブレット端末を埋め込み、GPSとインターネットを活用して時刻表や乗換案内の表示、災害時の避難誘導や子供の見守りなど、さまざまな役割を果たすバス停です。子供の見守りは、あらかじめWEBで登録しておいた合言葉と顔を認証して、子供の位置情報を保護者に通知する仕組みです。災害発生時には各バス停が避難所までの経路を表示し、日本語と英語の両方で避難誘導を行います。ほかにも、バス停にいる人の年齢や性別を識別し、個人に合わせた地元商業施設の広告や、市の広報、天気予報、鉄道の運行情報などを表示することができます。

野々市市のコミュニティバス「のッティ」をモチーフにしたバス停。タブレット端末が埋め込まれている

―「Bus Stopプロジェクト」が始まったきっかけは何ですか?

 全国で増加している行方不明者や、災害時に外国人が防災無線を理解できず逃げ遅れたなど、地域の課題を解決したいという学生の思いからアイデアが生まれました。身近にあるバス停から情報を発信すれば、地域の人々に届きやすいのではないかと。

地域連携に興味を持つ学生が多く集まる

―袖研究室が独自に開発した通信技術も使われているそうですが、それはどんなものですか?

「LoRa」を使った通信技術ですね。LoRaとはLPWAの規格の1つです。LPWAとは、Low Power Wide Areaの略で、消費電力を抑えながら、広い地域にわたって通信できる無線システムです。規格によっては4~50キロにわたって通信できるものや、無線免許を取得せずに利用できるものもあり、IoT(Internet of Things: さまざまなモノをインターネットに接続し、制御するシステム)が普及する中、今後成長が見込まれている技術です。
しかしLPWAで通信できるのは基本的に、位置情報や温度、湿度など容量の小さなデータに限られ、画像など大きなデータの通信には向きません。そこで、独自にLoRaの改良を試み、画像を圧縮して通信することに成功しました。これによって、離れたところにある「賢いバス停」同士や「のっティ」車両との通信が可能になったのです。この技術は現在特許を出願中です。

―高専と大学の学生が一緒にプロジェクトに取り組んでいるそうですね。

今年度、高専生が中心となって新たにスタートしたプロジェクトに、災害時の顔認証システムがあります。着の身着のままで避難してきて、身分を証明するものがない場合に、顔認証で本人確認ができるシステムです。大人数の利用を想定しているので、なるべく少ないデータ量で顔認識ができるよう工夫しているようです。「賢いバス停」と同じように、画像や音声を流せる専用端末で、身近な地域の災害の状況をリアルタイムに伝える機能も持たせます。公民館などへの設置を念頭に、石川県能美市に協力をお願いしたら、快く引き受けてもらえました。また、農家の皆さんにご協力をいただき、トマトのハウスに温度センサーを設置してデータを集め、収穫時期を予測するシステム、田んぼの温度や湿度、水位を測るセンサーでデータを取り、田んぼの状態がパソコンなどで把握できるシステムを開発している学生もいます。田んぼの方は、データの通信にLoRaを活用をしています。

開発中の顔認証システム。少ないデータ量で正確に認証しなければならない

-今後の展望をお聞かせください。

 今後もIoTを中心とした情報技術を駆使して、人々の生活をサポートしたり、安全・安心な暮らしを守るシステムの開発を続けていきます。システムを作るだけなら、実は簡単です。しかし、地域によってニーズはそれぞれ違うもの。学生には、地域の人々の声によく耳を傾け、本当に必要とされているものを作り出せる力を養ってほしいと思います。

HOMEReport from the Lab袖 美樹子 准教授

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