国際高専:国際高等専門学校

エンジニアリングデザインVA 前学期成果報告会 Engineering Design VA Presentations

2022年7月27日(水)、5年生のエンジニアリングデザインVAの前学期成果報告会が金沢キャンパスで行われました。エンジニアリングデザインは国際高専のものづくり・コトづくり教育の核となる科目で、1~5学年通して履修します。(エンジニアリングデザインについて記事を読む)5年生のエンジニアリングデザインVでは実社会にある課題の解決に取り組みます。今回の前学期成果報告会は「中間報告会」のような役割で、各学生がそれぞれのプロジェクトの内容と進捗状況のプレゼンテーションを行い、高専・大学の先生方から質問や後学期の活動に向けたアドバイスを貰います。プレゼンテーションは各学生10分で、Zoomを使ってオンラインで行われました。

Improving a Hair Curling Iron
Considering Less Damage for Hair(瀬戸 悠華さん)

瀬戸さんは巻き髪をスタイリングするカールアイロンが髪に与えるダメージを減らすために、ペルティエ効果を利用したカールアイロンを研究開発しています。ペルティエ効果は異なる金属を接合し電圧をかけ、電流を流すと接合点で熱の吸収・放出が起こる現象です。

一般的に、市販のカールアイロンは200度前後の温度でスタイリングしますが、160度を超えると髪へのダメージがあるとされています。しかし、髪には100度でスタイリングしたあとすぐに冷やすと同等のスタイリング効果を発揮する特性があります。瀬戸さんはペルティエ効果を使って高温と低温を素早く切り替えるカールアイロンを作ることで、髪へのダメージを抑えながら高いスタイリング効果を期待できると考えました。

中間報告の段階では85度でスタイリングした髪と、85度から10度へ冷やした髪のスタイリング効果を比較する実験を行い、後者のほうが効果が高かったことを確認しました。後学期はさらに高温を作り出せる改良機の設計に取り掛かります。

脳波を用いたライフログの自動生成(勝又 舜介さん)

勝又さんは自身の祖母の「私、今日何してたっけ?」という質問に答えられなかった苦い経験から、高齢者などの認知症患者が一日の行動を振り返ることができるライフログ生成の研究を始めました。小型カメラを使って撮影することは容易ですが、振り返るために時間がかかってしまいます。そこで、脳波を同時に記録・解析して「重要な瞬間」を抽出できるのではないかと考えました。これまでに行った実験では、頭皮上脳波(EEG)を読み取る計測器を装着した状態でテレビゲームをプレイし、録画した映像と脳波の波を比較してその関係性を調べました。結果としてはゲーム映像と脳波データをスライダで観覧できるシステムの構築には成功しましたが、有益な関連性はまだ確認できませんでした。今後は実際に一日カメラを装着して生活する実験を行い、機械学習を使って自動抽出の精度を上げたいと言います。

eスポーツプレイ中の身体動作とパフォーマンスの関係(深山 寧皇さん)

オリンピック種目が検討されるなど、拡がりを見せるeスポーツ業界ですが、流行とは裏腹に健康被害を訴える人も増加しています。深山さんは健康被害に悩んでいる人への改善策を提案すべく、長時間パソコンの前に座る人の腰痛などを予防するシステムを研究しています。具体的には人の関節を推定することができるアルゴリズム「openpose」で対象者の姿勢を推定し、1分以上悪い姿勢が続いたら警告音を鳴らすプログラムを作っています。現在はopenposeで姿勢に加えて手首や指など、細かく推定する実験まで行っており、今後は実際に警告音を鳴らすプログラムの作成に取り組みます。また追加の目標として撮影したデータを使い、姿勢とゲームスコアなどのパフォーマンスへの影響を比較検証したいと考えています。

Data Analysis in Business Field(プラチャクタム・イッサダー)

プラチャクタムさんは経営とデータ分析に関心があり、企業が売上を伸ばすためにトレンド予測をするプログラム作成を目指しています。トレンドを数値化できれば、企業が効果的なタイミングで商品展開できるようになると期待しています。前学期ではタイのマンゴー輸出を対象にインスタグラムを使った実験を行いました。インスタグラムのテキストデータを解析してマンゴーがトレンドになっている国を抽出することによって、次にマンゴーが流行し、需要が発生しそうな国、「インド」「ベルギー」「バングラデシュ」という実験結果が得られました。今後の目標としてはより多くのデータを解析できるようにプログラムを改善し、マンゴー以外にどんなフルーツが流行の兆しを見せているのか予測できるようにしたいと語りました。

マルチコプター制御システムの設計制作(青木 心路さん)

青木さんと後述する喜田さんは全日本学生室内飛行ロボットコンテスト(飛行ロボコン)出場を目指してマルチコプターの開発に取り組んでいます。青木さんは機体の制御部分を担当しており、これまでの成果を報告しました。青木さんは基板をKICADで設計したあと海外企業に製作を委託、2週間ほどで届いた基板にRaspberry Pi PicoとESC、9DoF、受信機、サーボ、openMVを取り付けました。またピッチ角度を制御するプログラムをシミュレーションでテストし、完成させました。今後の課題としては完成した実機での制御実験と、来期に向けた自律飛行の準備としました。

マルチコプター機体の設計製作(喜田 湧也さん)

喜田さんは飛行ロボコンに出場するマルチコプターの機体製作を担当しています。前年までの先輩たちが製作した歴代のマルチコプターの特性を継承し、CFRP(カーボン繊維強化プラスチック)で軽量かつ高強度な機体を作ることにしました。機体を円形にし、中央の制御機器を4本のワイヤーで固定する独自のアイデアで更なる軽量化を行います。これによって積載重量に余裕が生まれ、自律飛行に必要なパーツを搭載しやすくなります。

これまでに行った活動としてはCFRPで機体フレームを製作する技術の修得と、懸念点であるワイヤー懸架式の振動実験です。苦戦した点として、機体フレームを量産するために木材の型を作っていますが、エポキシ樹脂が合板に浸透してしまい、型の再利用が出来ませんでした。この解決策として喜田さんは型をアルミテープで覆うことによってエポキシ樹脂の浸透を防ぎ、安定して再利用できる型の設計に取り組んでいます。今後の目標としては機体を完成させ、操縦技術を蓄積することです。

コロナ禍におけるのと鉄道利用実態の把握と能登スタンプラリー
(馬場 敢太郎、ザヒド・昴アブドゥッラー、木下 もみ)

馬場さん、ザヒドさん、木下さんは大学コンソーシアム石川の採択を受けて、石川県ののと鉄道を対象に複数のプロジェクトを同時に行っています。詳しくはこちらの記事をご覧ください。成果報告会のプレゼンテーションでは活動概要と現在行っているGoogle広告の効果を発表しました。関東を中心に展開された広告は1.41万インプレッション(表示回数)、24クリック数で、ザヒドさんの評価では「休暇前の平日のみでこのクリック数なら概ね想定通り」としました。能登スタンプラリーも参加者14名、総スタンプ数21と、滑り出し状況を報告しました。

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