国際高専:国際高等専門学校

「伝統芸能東二口文弥人形浄瑠璃『でくのまい』継承者の減少」に取り組んだ国際高専Language & Culture Clubが優秀賞。 大学コンソーシアム石川「2021年度地域課題研究ゼミナール支援事業」地域課題発掘枠で。     

Language & Culture Clubの皆さん

地域課題発掘枠で優秀賞を受賞したLanguage & Culture Clubの皆さんと顧問の松下教授

 

公益社団法人大学コンソーシアム石川主催の「2021年度地域課題研究ゼミナール支援事業」の成果発表会が2022226日(土)にオンラインで開催され、「地域課題発掘枠」で採択を受けていた国際高等専門学校 Language & Culture Club(松下ゼミ)が優秀賞を受賞しました。

 「地域課題発掘枠」では、国際高専からは Language & Culture Club(松下臣仁ゼミ)と袖美樹子ゼミの2チーム、金沢大学から2チーム、石川県立看護大学1チームの計5チームが発表を行いました。

Language & Culture Club(松下ゼミ)と袖美樹子ゼミの発表テーマは以下の通りです。

Language & Culture Club(松下ゼミ):「伝統芸能東二口文弥人形浄瑠璃『でくのまい』継承者の減少」(活動地域:白山市)
袖美樹子ゼミ:「コロナ禍におけるのと鉄道利用実態の把握」(活動地域:穴水町)

伝統芸能東二口文弥人形浄瑠璃『でくのまい』で使用される「でく」(人形)

 

【優秀賞を受賞した「伝統芸能東二口文弥人形浄瑠璃『でくのまい』継承者の減少」の発表の概要】
国際高専白山麓キャンパスの課外活動の一つである「国際高専Language & Culture Club」の一環として、国際理工学科2年生のアラ―さん、勝方さん、本田さん、1年生の柿田さん、三輪さんの5名が活動に取り組みました。

東二口文弥人形浄瑠璃は、文楽の前に流行した古浄瑠璃・文弥節を受け継いでいます。
現在、文弥人形浄瑠璃が継承されているのは、日本で4箇所のみで、そのうちの一つが石川県白山市 東二口地区に今もなお当時の趣のままに残っています。かつての村の有志が京都で習い覚えたものを伝え、350年以上にわたり、継承されてきました。また東二口では、一人使いと呼ばれる形式を用いており、一人の舞手がひとつの「でく」(人形)を扱うことでその人形の人間像を表現しています。
(昭和52年「尾口のでくのまい」として、国指定重要無形民俗文化財に指定)

今回の活動の目的は、東二口文弥人形浄瑠璃の現状理解をもとに、国内外に向けて「でくのまい」のPRと地域伝統芸能を活用した地域活性化について保存会に提案し、共に実践することでした。

保存会の方々へのインタビューや演技指導を通じて、東二口文弥人形浄瑠璃に関する理解を深めていった。


インタビューや見学からたくさんの課題が見えてきました。

1つ目は、東二口地区の住民の高齢化と、人口減少による担い手不足です。
これまでの対策としては、毎年2月に行われる本公演に向けて金沢工業大学の有志学生が3から5名、参加。定期的に練習会に参加し、技術指導を受けていますが、かつては一演目に20名以上いたのが、今では12名しかおらず、いくつもの役割をこなしているので、担い手不足の問題は深刻と言えます。

2つ目は、道具の劣化が進んでおり、それらの修繕が必要だと感じました。
これまでは保存会の方々による手作業の修繕が行われてきましたが、修繕が追いついていない状態となっています。

3つ目は東二口人形浄瑠璃に関する保存会独自の情報発信と継承の手段が無いことです。
現在は、白山市公式WEBサイトやYouTube、地域の小中学校での講演を通して情報発信が行われていますが、より深く人形浄瑠璃に触れてもらう機会にはまだ至っていません。

これらのことから、Language & Culture Clubでは、課題解決に向けの次のようにポイントを定めました。
・これまで長く使われてきた小道具への愛着心喚起と効率的な維持管理
・若い世代により深く文弥人形浄瑠璃の魅力に触れる機会づくり
350年以上にわたり受け継がれてきた情報をまとめ、魅力を発信

これらをもとにたくさんのアイデアを出し合い、その中から以下の3つに絞り、活動を行いました。

1)道具への愛着
 地域伝統芸能である檜細工を活用した人形用檜笠の製作

2)文化に触れ、魅力を伝える機会
 地域の小中学生に向けて、人形浄瑠璃を身近に感じてもらうためのミニ人形製作ワークショップの実施

3)情報の集約と発信
 当保存会の活動や人形浄瑠璃の魅力を継続的に発信する保存会独自のWebサイト及びSNSの構築

◆活動成果について
1)白山麓地域の伝統工芸である檜細工を活用した人形用檜笠の製作 
劣化した小道具のひとつである編笠に着目し、白山麓地域の伝統工芸である檜(ひのき)細工を活用した人形用檜笠の製作を11月下旬に行いました。その際に檜細工の伝統工芸士香月久代先生にご指導いただき、製作しました。
香月先生によりますと、これまで文弥人形浄瑠璃の小道具に檜細工を使ったものは無かったそうで、白山麓の伝統芸能と工芸を組み合わせることで、これまでになかった価値として伝統継承の可能性が広がることを実感できました。

檜細工の伝統工芸士香月久代先生の指導のもと、人形用檜笠の製作に取り組む学生たち。
これまで文弥人形浄瑠璃の小道具に、白山麓の伝統工芸である檜細工を使ったものは無く、
白山麓の伝統芸能と伝統工芸という既存の価値の組み合わせから新しい価値が学生により創出された。

2)白山麓地域の小中学生を対象に、ミニ人形づくり体験のワークショップを1月下旬に開催
参加者を集める手段としてチラシを制作し、地域の小中学校に配布。ワークショップ当日は、東二口文弥人形浄瑠璃の紹介と、人形の製作、レーザー加工機を用いたオリジナル人形用ネームプレートの製作を行いました。

地域の小中学生を対象にしたミニ人形づくりのワークショップを開催し、文化に触れ、魅力に触れる機会を創出した。
人形のネームプレートもレーザー加工機で製作された。

 

3)保存会の方が運営できるWebサイト及びSNSの基盤の構築
Webサイトは、東二口文弥人形浄瑠璃に関する基本情報、ツイッターでは保存会目線からの活動の様子を発信していきます。
保存会の方も編集ができるようアカウントを共有しており、充実した投稿を予定しています。

これらの活動を踏まえ、次年度以降は以下の4つのことを進めていく考えです。
◆ミニ人形作成で製作したネームプレートの商品化の検討
◆3Dプリンターなどを活用したデジタルファブリケーションによる小道具の修繕・管理
◆若い世代が伝統工芸に触れることができる機会の拡大
◆情報発信の基盤となる保存会のWebサイトやSNS運営のサポートの充実

この活動を通じて、「文化の継承には、白山麓の伝統芸能と工芸の融合といった、限られた条件の中で新しいアイデアを生み出すことが重要」であること、「1年だけでは成果は出しづらいため、計画的、継続的な活動が必要」だとわかりました。
そして「地域の方と関わることでコミュニケーションの大切さを学び、関わりのなかった分野に足を踏み入れ、興味と関心を持って取り組んだ経験を今後の社会活動に生かしていきたい」と発表を締めくくりました。

【関連記事】
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国際高専が公益社団法人大学コンソーシアム石川の 「2021年度地域課題研究ゼミナール支援事業」に3件 採択(2021615日)
https://www.ict-kanazawa.ac.jp/2021/06/15/14138/

【国際高専 Language & Culture Club Facebook
https://www.facebook.com/ICT.LandC

【関連ページ】
大学コンソーシアム石川 
2021年度 大学・地域アクティブフォーラム
https://www.ucon-i.jp/newsite/2022/01/2021-3.html

HOMENews「伝統芸能東二口文弥人形浄瑠璃『でくのまい』継承者の減少」に取り組んだ国際高専Language & Culture Clubが優秀賞。

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