国際高専:国際高等専門学校

エンジニアリングデザインIII 最終発表 Third-year students final presentation for Engineering Design III

 

オンラインで行われたEDIII最終発表の様子

 

2022225日(金)、国際理工学科3年のエンジニアリングデザインIIIの最終発表が行われました。3年生は本来ニュージーランドのオタゴポリテクニクへ1年間留学するカリキュラムとなっていますが、新型コロナウイルス感染症の影響で去年に引き続きリモート留学となっています。今年度の3年生6名はこの状況に耐えながらも1年間のカリキュラムを完遂し、この日が最終日でした。エンジニアリングデザインは5年間行われるハンズオンでものづくりを行う科目で、3年生は後学期になってから個人、またはグループでプロジェクトに取り組んでいました。英語で行われた最終発表ではオタゴポリテクニクの教授が10名以上集まり、各発表のあとは質疑応答の時間が用意されていました。それぞれのプロジェクトを以下に紹介します。

 

井上 武虎さん Developing an AR Keyholder to Enhance Online Shopping

井上さんのプロジェクト『オンラインショッピング促進のためのARキーホルダーの開発』では、コロナ禍で需要が増しているインターネット通信販売にAR(拡張現実)を活用したアプリの開発に臨みました。ARは仮想世界を現実世界に重ねる技術で、スマートフォンのカメラ機能などを使ってCGで作られた3D映像を現実世界に映し出すことができます。現在、洋服や化粧品などのARシミュレーション機能は存在しますが、バッグに取り付けるアクセサリーなどの人体以外に取り付ける商品のものは導入されていません。井上さんはこれに着目し、unityvuforiablenderを使ってスマートフォンのカメラ越しにバーチャル・キーホルダーを試着できるアプリを開発しました。

もっとも苦戦した点は鎖部分のモデリングで、今後の課題としてはバッグのジッパーなどの指定部分に固定できる機能と3Dスキャン機能の追加、指でタップした時の動きの調整を挙げました。

質疑応答では「キーホルダーを選んだ理由」「アプリの存在価値」などを問われ、井上さんは「ARを使った研究がしたかった」「購入前のアクセサリーをバッグなどに取り付けた姿を実際に見ることができるので通信販売を促進させる効果が期待できる」と回答しました。

 

田中 杏奈さん、徳山 美結さん Adapting Project Mapping to SDGs

タッチするとアニメーションが変化する

田中さんと徳山さんの2人組は『SDGsにおけるプロジェクションマッピングの活用法』というタイトルで研究を行いました。SDGsは何かを達成するために「トレードオフ」という犠牲が発生する場合があります。2人は印象に残りやすいプロジェクションマッピングに注目し、複雑なSDGsのトレードオフを学習できるゲームを考案しました。このゲームは海、森、町を含む人間社会のアニメーションを白山麓キャンパスのボルダリングウォールに映し出して遊びます。プレイヤーは壁を登って該当箇所をタッチすることで、トレードオフの結果が変化として反映されます。例えば二酸化炭素を減らすために風力発電所を建設すると森林とそこに住む動物が減ってしまう仕組みです。その後、現地テストを重ね、見やすいカラーバランスと部屋の明るさなどを調節しました。

質疑応答では「今後の改善点」「登っている人の影は邪魔にならないのか?」などについての質問があり、2人は「センサーを追加してインタラクティブ性を向上したい」「影は問題にならなかった」と答えました。

 

畠中 義基さん Small Undercarriage with High Traction Power

畠中さんのプロジェクトは『高い牽引力を有する小型車台』というタイトルで、本人が目指す自動農業ロボットの車台部分の小型プロトタイプを製作しました。背景には日本の農業人口の減少・高齢化があり、世界の食料の80%が小規模農家で生産されていることから畠中さんは家族単位で購入可能なロボットを作ることで農業人口を増やしたいと考えています。そして、活動期間が後学期のみでマンパワーも限られていることから目標を高い牽引力を有する小型車台に定めました。CADでギア部分をデザインするところから始め、白山麓キャンパスのメーカースタジオの工作機械と3Dプリンターでパーツを切り出し、LCD Keypadで操縦コントローラーを製作・プログラムしました。結果、合計600時間を注ぎ込んでキャタピラで前後左右に移動するところまでたどり着きました。今後の目標は実際の畑での牽引力の計測、ワイヤレス化、耕す機構の製作、自動化を挙げました。

このプロジェクトはオタゴポリテクニクの先生方から高い評価と関心を引き、ロボットの詳細に関する質問が相次ぎました。畠中さんは「最大積載量は40キロ」「バッテリーの稼働時間は約30分」「コストは予想が付かない」とそれぞれ答えました。

コントローラーで前後左右に操縦できる

 

 

 

種村 真央さん Reusing PET Bottles for a More Interactive Classroom

種村さんが製作した一人掛けソファ

オタゴポリテクニク留学がオンラインになってしまった3年生は金沢キャンパスの教室からリモートで授業を受けています。種村さんは殺風景な教室を課題に設定して『よりインタラクティブな教室のためのペットボトルのリユース』と題し、日本が抱えるゴミ問題を同時に解決するプロジェクトを行いました。クラスメイトにインタビューした結果、製作する家具は一人掛けソファに決定しました。その後の調べでペットボトルを素材に家具を作るプロジェクトは前例が見つかりましたが、いずれもテープで固定したもので強度が実用レベルではありませんでした。種村さんは独自の方法でペットボトルをつなぎ合わせてから空気を注入することで高い強度を確立し、ビニール素材で作ったクッションを補修パテとネジで固定しました。最大積載量は脅威の368キロで、座り心地も使用者から高い評価が得られました。課題としては「クッションの滑りやすさの改善と素材の選定」「量産するためのより再現性の高い製作方法」などを挙げました。

質疑応答では環境への意識向上のために小学校の授業に導入できるのではないかという意見があり、種村さんはネジやハサミなどの鋭利な道具も必要だが、12歳以上であれば可能性はあると述べました。

 

佐藤 俊太朗さん Hanging Dryer for Folding Machine

3Dプリンタで製作した洗濯ばさみ

佐藤さんのプロジェクトは『全自動衣服折りたたみロボット用の洗濯ばさみ』というタイトルで、世界でもプロトタイプや商品化が始まっている全自動で洗濯した衣服をたたんでくれるロボットで想定される機構に理想的な洗濯ばさみのデザインを研究しました。開閉メカニズムの構想とパーツのデザインはCADソフトで行い、それぞれ3Dプリンターで製作・組み立てを行う試行錯誤を繰り返しながら完成品にたどり着きました。今後の目標はさらに改善された開閉メカニズムと、実際のロボットに取り付けた時の動作確認としました。

質疑応答では「テーマのユニークさ」「機構の詳細」「対応する衣服の種類」についての質問があり、佐藤さんは「参考にするものはなかったので独自で開発する必要があった」「改善案としてはテンションリングの追加」「現状は薄い布のみしか対応していない」とそれぞれ答えました。

HOMENewsエンジニアリングデザインIII 最終発表

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