高専ロボコン 全国大会出場3名インタビュー
11月27日(日)に国技館で開催された高専ロボコンの全国大会。惜しくも初戦で敗れたものの、初出場3名で全国大会出場という偉業を成し遂げた国際高専Aチーム「美技成 A-Z(ビギナーズ)」の左から井上 武虎さん、佐藤 俊太朗さん、畠中 義基さん(4年生)に話を伺いました。
全国大会出場 インタビュー
インタビュアー:大脇 ジョナサン・幸介
―― まず、高専ロボコンとは何か教えてください。
井上 NHKが主催する、全国の高専生が大賞を目指してアイデアを競い合う大会です。毎年変わる競技ルールに挑みます。
―― 毎年ルールが変わるんですね。今年のルールは何だったんですか?
畠中 ロボットが紙飛行機を飛ばす競技です。テーブルや筒に着地させてポイントを競います。
―― ルールが発表された時の印象はそれぞれどうでしたか?
畠中 難しそうだなって思いました。試しに自分で紙飛行機をテーブルに乗せようと思ったら無理だったので、点を入れられる自信はありませんでした。
佐藤 面白そうだと思いました。紙飛行機は身近なものだし、対戦形式という点に惹かれました。
井上 製作するロボットが1体でよかったと思いました。
ロボコン初出場 製作は手探り
―― どのように構想を立てたんですか?
畠中 まずは1点を確実に取れるロボットを作ることを目標にしました。トリッキーなことはせず、可能性がある機構を考えてはプロトタイプを作り続けました。そして上手くいったものを採用していきました。今回のロボットで言うと下のバネの部分です。
―― 本格的にロボットを作り始めたのはいつ頃ですか?
畠中 7月中旬くらいからです。武虎はもっと前からプログラム作ってたよね?
井上 初めて使うセンサーや通信の勉強をしてましたね。仕組みさえわかればプログラムは移植が可能なので。
―― 佐藤さんは配線を担当されましたが、1から勉強したんですか?
佐藤 そうですね。壁にマイコンやモータを配置して配線し、あとから実機に移しました。
―― 地区大会で技術賞を貰って全国大会出場を決めましたが、正直全国に行けると思っていましたか?
佐藤 1か月前には3点を確実に取れるようになっていたのですが、ほかの地区大会の動画を見たら1点取ることも苦戦しているチームがいたので、もしかしたら行けるかも?って思うようになりました。
畠中 今までのロボコンだと10点20点は当たり前だったので、もしかしたら3点でも行けるかもって思いました。
―― 実際に上手く3点は取れたんですか?
佐藤 1戦目は失敗しましたけど、その後は調整しました。スポットを越えていたので、撃つ場所の距離を下げました。
地区大会で技術賞受賞 夢の全国大会へ!
―― 畠中さんはチームリーダーとして、全国が決まった時の感想はいかがでしたか?
畠中 行けてよかったです。来年5年生で卒業なので、どうしても今年行きたかったです。心配だったのでほっとしましたね。
―― 全国大会までの約1か月間は何をしていたんですか?
畠中 下のバネはちゃんと点を取れていたので、上のローラー式がまっすぐ飛ぶように工夫を凝らしました。紙飛行機に個体差があるので、それを無くすためにセットした紙飛行機の拡がりを抑えるために挟んで押す仕組みを作りました。あとは発射ガイドを付けたり、プログラムで回転数はどれがまっすぐ飛ぶかなどを実験しました。
―― 調整は間に合ったんですか?
全員 いいえ!(笑)
畠中 調整はやろうと思えば一生できるので(笑)
佐藤 平日は毎日19時まで3~4時間、土曜日は9時半~17時、定時を守りながら頑張りました!
―― ロボットを国技館に見送ったときはどういう気持ちだったんですか?
佐藤 解放感です(笑)移動前日で浮かれてたし、どうせやれることもないので。
―― 全国の雰囲気は地区大会と違いましたか?
全員 全然違います。全国はバケモノでした。
畠中 桁違いでした。強豪校は得点能力やロボットの完成度もそうですが、例えば飛行機の管理がしっかりしていました。専用の飛行機班がいて、アイロンを何分あてて、自然に紙が開くまでの時間をタイマーで測ったり…レベルが違いました。
佐藤 紙飛行機のばらつきが生まれないように専門のチームがいたんです。うちは多少崩れていても使いまわしです。
畠中 3人では無理だよなー。
佐藤 全国大会でローラー式が全然入らなかった言い訳になってしまうんですが、練習環境にも誤算がありました。うちは練習場所が高さ3mしかない校舎エントランスで練習していたのですが、国技館は何十メートルもあるので、空気の密度の影響が全然違うんです。練習では2試合に1回くらいは筒に入れるくらいの精度だったのですが、大きな会場のテストランの時に「あ、違う」って思いました。決めていた数値でやっても全然違うし、大きな体育館で練習したかったです。
畠中 本当にテストランの時驚いたよね。
―― それはその場で調整は無理なんですか?
畠中 無理ですね。25チームいるので占有もできないですし。
たった3人のチーム
―― 今回の特徴として、たった3人のチームでしたが、改めて印象はどうですか?
井上 別に、普通だよね? お互いのことがわかるから喧嘩しないし。
佐藤 結局ロボットは完成したしね。他のメンバーの仕事を待つ時間もないし、もうひとり居れば作業分担できたかもしれないけど、このメンバーでやる以外を知らないので(笑)でも連携は良かったと思います。
畠中 機械班はあと1~3人欲しかったですね。でも上下関係がないのは楽でよかったです。寮生活で一緒に暮らしていたので考えてることもわかりますし。
―― 全国大会は惜しくも4-3で負けてしました。試合中はどんなことを考えていたんですか?
畠中 相手チームの飛行機が入った時「あ~あ」って感じですね。そのあとは奇跡を信じつつ狙っていました。同点ではなく勝ちに行っていたので、滑走路を狙わず筒を狙っていました。
佐藤 2点先制して、相手は前の試合0点だったので勝てるのかな?って思ってたら3点入って「ヤバい」って思いました。もう当てずっぽうです。
井上 でもうちのロボットは数撃ちできないんだよね~弾数が決まっているので。
佐藤 2分半あっという間だった。惜しかった。
コメンテーターが褒めてくれた
畠中 いい試合だったよね。ベストマッチじゃないかな?小島瑠璃子さんとカズレーザーさんも「どの高専よりも乗せる精度が高い」って褒めてくれてたのが嬉しかったです。メンバーが少ないからこそ、数少ない飛行機を大切に決める作戦だったので。
佐藤 僕らが頑張ったところ、それを言ってほしいってかゆいところを言ってくれました。さすが解説わかってるなって思いました。
―― 来年もロボコンに挑戦しようと思いますか?
佐藤 検討中ですね。今年の収穫は完成したものをイメージできるようになった点です。今年は表紙のないプラモデルを作るような状態でした。ピースとピースのつながりは理解できるけど、完成図のイメージが出来なかったので。
畠中 今年は必死だったので、もしやるなら楽しんでやりたいですね。
―― 最後に、感謝を伝えたい人はいますか?
畠中 ラーメン岩本金沢久安店ですね。あとは特別賞をくださったローム株式会社さま、大変お世話になりました!あと、練習したエントランス前の事務局の皆さん、うるさくしてごめんなさい。秘密結社林研とサポートしてくれた伊藤恒平研にも感謝を伝えたいです。
全員 今後も頑張りま~す!!
―― お疲れ様でした!おめでとうございます!
※さらに詳しく全国大会での活躍についてはこちらの記事をご覧ください。