【夜景を見たままの印象で普通紙に印刷できる世界初の技術を開発】

国際会議「IDW2025」にて《Best Paper Award》を受賞
大塚 作一教授・林 道大教授

 

国際高等専門学校の大塚 作一教授の研究グループが、2025年12月3日から5日まで広島国際会議場 (広島県広島市)で開催された「IDW2025(The 32nd International Display Workshops)」 において、Best Paper Award を受賞しました。

IDWは、ディスプレイ技術と画像処理分野の研究者が世界中から集う、国際的に最も権威ある学術会議の一つです。

本研究は、「夜景を見たままの印象で普通紙に印刷できる世界初の技術」を実現したもので、従来の印刷方式では不可能だった「自然な夜景」を再現できる点が高く評価されました。

夜景を「見たままの印象」で普通紙に印刷できる世界初の技術を実現した

 

【受賞論文について】

■タイトル:
Printable Moderate-Dynamic-Range (MDR) Image Generation Employing High-Dynamic-Range (HDR) Image Capture Technology Aligned with Human Circadian Behavior
(日本語訳)
人間の概日リズムを考慮したハイダイナミックレンジ(HDR)撮影画像からの印刷可能なモデレートダイナミックレンジ(MDR)画像の生成技術

■著者:
• 大塚 作一(国際高等専門学校)
• 林 道大(国際高等専門学校)
• 比良 祥子(鹿児島大学大学院理工学研究科)
• 岩井田 早紀(鹿児島天文館メディカルカレッジ)


【研究の概要】

本研究は、「夜景を見たままの印象で普通紙に印刷できる世界初の技術」を実現したものです。
夜間・夕方の光環境は、現実世界では 10⁵:1 以上の超ダイナミックレンジ を持ち、人間は「薄明視」と呼ばれる視覚特性でこの全ての領域を知覚することが出来ます。
しかし通常のディスプレイ表示画像(SDR:Standard Dynamic Range)は 約200:1以下 のコントラストしか扱えず、夜景の表示では以下の問題が生じていました。

• 明るい光源が白飛びする
• 暗部が黒く潰れ、階調が失われる
• 実際の肉眼での印象とは大きく異なる
• 印刷すると画質が更に大幅に低下する

大塚教授らは、HDR(High-Dynamic-Range)撮影技術と、人間の 概日リズム(サーカディアンリズム) に基づく独自の視覚モデル「Normalized Visual Percept(NVP)」を応用し、MDR(Moderate-Dynamic-Range)画像 という新たな画像形式を提案しました。

 

【技術のポイント】

(1)人間の視覚モデルに基づく2段階変換処理
HDR → hSDR*1 → hMDR*2 という2段階の画像変換方式を開発。
特に、日内の視覚変化(朝/昼/夕/夜)を反映する独自のGTM*3カーブ を導入し、夜景の自然な再現に成功しました。
*1 hyper-realistic SDR
*2 hyper-realistic MDR
*3 Global-Tone-Mapping

 

[参考図] 
従来技術との比較
(1) 左上が物理的に正しいHDRの写真(昼間見ると真っ暗に見える)
(2) 右上が従来のSDR画像(昼間見ると色が濃く、ハイライトと暗部がつぶれている)
(3) 左下がHDRトーンと呼ばれる従来の改良技術(昼間見ると色が鮮やかすぎて、全体的には暗く見える)
(4) 提案手法(hMDR)では自然な印象の画像が生成され、かつ、印刷も可能

 

(2)約30:1の低コントラストでも“自然に見える”画像を生成
極端にダイナミックレンジを圧縮しても、人間の知覚に重要な 光源まわりの明暗構造や色トーン を保持できます。
従来の印刷方式では不可能だった「自然な夜景」を再現できる点が高く評価されました。

(3)高価な光沢紙を使用せず、普通紙(マット紙)での高品質印刷が可能
一般的なマット紙を使用した場合でも、従来SDR印刷より 知覚的自然さが大幅に向上することが、実験で示されました。

 

【本研究の革新性】

本研究は、以下の点で非常に革新的です。
● 夜景印刷の根本的な限界を打ち破った
物理的には 超高ダイナミックレンジ の夜景を、極端に低いレンジ(約30:1)で自然に再現できる 点が、発表者の知る限り世界初の成果となります。

● 人間の概日リズムを画像処理に取り込んだ新発想
前回の報告(https://www.ict-kanazawa.ac.jp/2024/07/23/28292)では、人間の「朝型/夜型」といった 個人差ある明るさ知覚 を考慮するという研究手法自体が独創的で、画像処理分野に新たな理論的枠組みを提示しました。今回は、昼間とは格段に明暗の知覚範囲が広がる夜間の人間の視覚特性「薄明視」の実態を始めてGTMカーブにより具体的に明らかにしました。

● 昼間の室内で印刷画像を見ても「夕方や夜の光源」を自然に知覚できる
「印刷物は反射光、光源の質感は出ない」という従来の常識を覆し、人間の視覚特性を巧みに利用することで、印刷物でも 「光って見える」という新現象を再現しました。
これらの要素が総合的に評価され、IDW2025における 最優秀論文賞(Best Paper Award) 受賞につながりました。

 

【今後の展望】

本技術は、以下の分野での応用が期待されます。

• 夜景写真・天体写真の高品質印刷
• 電子ペーパー等の反射型ディスプレイへの応用
• 美術・文化財アーカイブ分野での“現場の光”の再現
• 防災・交通分野での夜間視認環境のシミュレーション

また、大塚教授は今後、室内HDR環境の再現技術への応用を計画しています。

 

 

(関連ページ)

IDW2025公式サイト

IDW Awards

大塚 作一教授が第18回日本色彩学会論文賞を受賞。色彩学の発展に貢献する最も優秀な原著論文と認められ(2025年7月16日)

国際高専大塚作一教授が企業賞を受賞(2024年12月4日)

【世界初】朝の見え方が生活パターンの影響で大きく異なることを発見。国際高専 大塚 作一教授の研究グループ(2024年7月23日)

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