飛行ロボコン マルチコプター部門で3位入賞しました。
2022年9月23日(金)~25日(日)、第18回全日本学生室内飛行ロボットコンテストが日本工学院専門学校蒲田キャンパス 片柳アリーナで開催され、マルチコプター部門に出場した国際高専のチームが3位入賞しました。「イカリング」と名付けられた機体を製作した5年生の喜田 湧也さん、青木 心路さん、顧問の伊藤 恒平教授に話を伺いました。
3位入賞 インタビュー
インタビュアー:大脇 ジョナサン・幸介
―― まず、飛行ロボコン マルチコプター部門とは何か、教えてください。
喜田 ドローンを操縦して点数を競う競技です。時間内により多くのミッションを達成すると得点が入ります。
伊藤 災害地へ救援物資を届けるドローンがテーマです。
―― 今回は3位入賞という結果ですが、いかがですか?
喜田 3位でプロドローン賞をいただきました。マルチコプター部門に出場したのは10チームで、大学や大学院もいました。国際高専はここ数年予選落ちが続いていたので、伊藤先生のためにも入賞できて良かったです。首の皮ひとつ繫がったという感想です。
幻の2800点
喜田 マルチコプター部門はミッションを完了したあとにヘリポートに帰還しないと得点が何点だろうとボードに載らないのですが、我々のチームは予選ラウンドは帰還できなかったので、予選通過の5チームに名前がありませんでした。実はその時に帰還していた場合の得点を計算してみたら2800点という高得点でした。この2800点という数字は予選・決勝ラウンド含めて、どのチームも出せていない大会の最高得点です。決勝ラウンドは予選より1分長い4分で、予選よりミッションを行う時間があるにも関わらず、我々が予選3分で出した2800点をどのチームも超えられませんでした。そのおかげか、特別枠というのがあって、それに選ばれて決勝ラウンドに進むことができました。
―― 凄いですね! 反響は大きかったですか?
喜田 優勝した東京農工大学の選手が話しかけてくれました。我々は機体にCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を使用しているのですが、軽くて丈夫な代わり、形にするのが、特に立体的にするのが難しいんです。今大会でCFRPを使用しているのは国際高専と東京農工大学だけだったので、うちの円形の機体を見て、作り方について聞きに来てくれました。
―― 操縦は喜田さんの担当でしたが、大会時の青木さんの役割を教えてください。
青木 8の字飛行のサポート、通話アプリを使って前後左右の指示出し、不時着した時に機体回収・修理などです。
伊藤 操縦者は機体を触ってはいけないルールなので、フィールドのどこに不時着しても青木さんがダッシュで駆け付けます。
―― ミッションのサポートをするわけですね。今回選択したミッションについて教えてください。
喜田 物資をバスケットに投下するミッションが前提にあって、これを達成してやっと他のミッションに挑戦できます。今回は物資を拾って投下するミッション、ロッキングウィング、8の字飛行を選択しました。
会場から拍手
―― 物資を磁石で拾ったシーンで会場から歓声と拍手が起きました。やはり難しいミッションなんですか?
喜田 そうですね。磁石を使った作戦が珍しかったのかもしれません。ほとんどのチームは大きいフックを使っていて、磁石を使っているのは2校しかいませんでした。
―― 機体を揺らすロッキングウィングは難易度が高いんですか?
伊藤 ロッキングウィングはドローンの挨拶のようなもので、「さよなら」という意味があるんです。非常にポイントが高いんですが、ミッションに取り入れていないチームがほとんどです。理由はインターネットにある既存の飛行プログラムにはロッキングウィングは搭載されていないので、自分でプログラムを書いていないと組み込むことができません。今大会でプログラムを自分で書いているのはうちを含めて2校しかいませんでした。
―― そのプログラムは青木さんが書いたんですか?
青木 先生と前年の先輩たちが残してくれたプログラムを元に作りました。例えば物資投下する時、正解バスケットの中に〇印があるのですが、それを見つけると機体が赤くビガっと光るようにしました。会場はスマホを使ってる人が多く、映像を送信するシステムは影響を受ける可能性があったので避けました。結果的にOpenMVカメラを使用しているチームが少なかったのも良かったです。
機体がバスケットの中に落ちてラッキーだった
―― 喜田さんが操縦で心掛けていたことはなんですか?
喜田 操縦は大会前から自然体でやろうと決めてました。でも1番手で、会場がとても静かだったので緊張しました。
伊藤 普通は静かなほうが集中できそうだけどね。
喜田 いや~もっと太鼓とか、応援団が欲しかったです(笑)
伊藤 でも2回飛べてよかった、ラッキーだったよね。バスケットの中に落ちたから続行できた。あそこで落下していたら続行不能になっていただろうし、そのおかげで3位になれた。(動画1:51のシーン)幸運の女神が微笑んでくれたのかもしれないね。
決勝ラウンド
- 1位 東京農工大学 2400点
- 2位 九州工業大学 情報工学部 2150点
- 3位 国際高等専門学校 2090点
- 4位 名城大学 1930点
- 5位 久留米工業高等専門学校 1050点
総括
―― 最後に、良かった点、心残りな点をそれぞれ教えてください。
青木 心残りだったのは制御、プログラムにもっと精通していればよかった点です。それでも5か月の短時間でここまでやれて良かったです。夏休みの間に勉強してシミュレーションを書けるようになったのは国際高専の授業でプログラミングの基礎知識が身についていたからだと思います。特に3年生のエンジニアリングデザインIIIで行ったLEGO EV3でピンポン玉を運ぶプログラムをpythonで書いた課題と、4年生の時に参加した「生態系へのジャックイン展」でサーバを建てた経験が役に立ちました。来年は金沢工業大学に編入するので、金沢工業大学のチームでまた出場したいです。
イレギュラーなデザイン「無理だろう」と言われていた
喜田 良かった点は1~4年生の補習を受けて鍛えた精神力を発揮できたことです(笑)今回デザインした機体「イカリング」は最初先生に「無理だろう」と言われていました。
伊藤 イレギュラーだったので、無理だろうと思いました。でもひょうたんから駒が出ることもあるので「とりあえずやってみ」と言いました。出来たら御の字、出来なかったらその時はプランBに移ろう、と。
喜田 大会規定の350グラムという重量制限があるので、できるだけ機体を軽くするためにカメラや電子パーツを紐で吊るすアイデアを思いつきました。中間報告会で発表した時に先生方に振動の心配をされましたが、反対を押し切りました。しかし、作るのに根性が必要で、紐を何度も結んで指が切れました。
喜田 心残りは予備機を作りたかったってくらいで、ほとんどありません。操縦の練習もすることがなくなるくらいやり込みました。シミュレーターを使って、夏休み前から週に3回くらい学校に来て練習しました。
伊藤 機体製作は大変だったと思います。最初は紐の束がなくなるまで何度も結び直していました。また、喜田さんは操縦技術の腕も確かです。ドローンは向きの把握が難しいのですが、その基礎がゲームで出来ていました。ただし、飛行ロボコンは操縦者と機体の距離が遠いので、足りない部分を練習や、サポートで補う必要があります。
喜田 紐で吊るすアイデアを「誰も思いつかないですよ!」って別の学校の選手に褒められたのが嬉しかったです。これからもこの反骨精神を大切にしていきたいです。
伊藤 思いついても誰もやらないと思うよ(笑)2人とも5か月間、頑張ったなって思います。
―― 3位入賞 おめでとうございます!!