「しかし人間は自然の一部であり、自然に対する戦いは必然的に自分自身に対する戦いでもある。」
― レイチェル・カーソン 
(1960年代に環境問題を告発したアメリカの生物学者)

 こんにちは、STEM科目担当のガトリ・ドーサフです。

 私が教員として主に焦点を置くことの一つに、学生たちの特定のトピックへの興味を育てるということがあります。そのためには、学生の生活や将来に直接関わるテーマを扱うことが重要になります。

 学生たちが選択授業で生物か、それとも別の授業かを選ぶことができると知ったとき、私は課題の半分が達成したと感じました。私の授業に参加する学生はすでに、私の教える生物の授業に興味を持っているからです。残りの課題は、この貴重な機会を活かして、21世紀に私たちが直面する大きな課題について、若くて優れた学生たちに興味を持ってもらうことです。

 環境問題が深刻な状況であることは既に知られています。環境科学は、学際的であり広範囲な科目です。広範囲なことが、環境科学を複雑に思える要因にもなりますが、同時に科学の希望にもなり得るのです。歴史は、実際に人類が協力すれば大きな課題も克服できることを証明しています。それではこの生物の授業で取り組んだ学習について紹介していきたいと思います。

希望は解決策の一部

 環境問題について懸念すべき理由は数多くありますが、それは解決へ向けての希望がすべて失われたというわけではありません。授業の中で学生たちは、人間の知恵や工夫によって環境問題を軽減することが可能であるということを学びました。そして、地球という唯一の「Home・故郷」を守りながら、人間のニーズを満たせるような例や革新的なアイデアについて話し合いました。授業で取り上げた解決策の一部は次のとおりです。
・マイクログリッドを使用した分散型エネルギーシステム
・交通に関連する温室効果ガス排出量を削減するための自動運転車のシェアリング
・産業的畜産とは対照的な放牧動物のシステム
・海藻を使った海洋の循環を復元する

問題を理解することは解決への第一歩

 授業の中で説明した概念を理解しやすくするために、さまざまなアクティビティと実験を行いました。

 その中の1つは、「The Tragedy of the Commons」の概念を学ぶための漁業ゲームです。このアクティビティでは、学生たちは架空の村の住人となり、魚を捕まえるために競い合います。魚の種類ごとに値札が設定されており、ゲームの勝者は、村で一番裕福な人になることができるというゲームです。

 ゲームの進め方は以下の通りです。学生たちは30秒のターンを4回行い、それぞれ1ターンを漁期とします。各ターンで、ストロー2本にテープをつけた道具を使って魚を釣り上げます。ゲームを続けるためには、各ターンで最低でも500円稼がなければなりません。また、各ターン終了時に、残った魚のペアがそれぞれ2匹の子孫を生むことになります。

 予想通り、最もお金を稼ごうと考えた学生たちは、最初のターンで魚をすべて釣り上げてしまいました。この結果、ゲームを続けて勝つためには、持続可能な戦略を考え、次の漁期にも十分な魚が残るようにすることが重要だと気付きました。この気付きを基に、ゲームをリセットし、1ターンからゲームをやり直し、今度は学生たちが協力して自然資源を継続することに取り組みました。環境に配慮した方法でゲームに挑むことで、学生たちは経済的にもより豊かなお金を得ることができました。

 もう一つの重要な実験は、土壌塩類化実験です。学生たちは、さまざまな塩分濃度で緑豆の成長を観察しました。実験の結果から、塩分が植物や食料源に悪影響を及ぼすことが明らかとなりました。

 また、生物多様性の減少の問題とそれが生態系に与える影響について理解するために、分類学(動植物の科学名のつくもの)と生態学(生物とその環境との相互作用)の研究について学びました。分類学の授業では、顕微鏡を用いて、色々な動物や植物を観察しました。生態学の授業では、教室で食物連鎖のアクティビティが行われました。このアクティビティでは、特定の栄養レベルの動物を選び黒板に貼り、協力して食物連鎖を作り上げなければなりませんでした。

科学的方法は解決への確かな方法です

 学生たちは科学的手法を用いて、自分たちが選んださまざまな場所の空気の質をテストするための実験設計についてブレインストーミングを行いました。そして定性的および定量的データを話し合いました。これは、学生たちがさまざまな種類の大気汚染物質とその発生源について学ぶだけでなく、科学的手法や科学用語に慣れることにも役立ちました。

  学生たち、そして私も、充実した学びでした。後学期では、最も差し迫った環境問題である気候変動に焦点を当て学んでいきます。

ガトリ・ドーサフ

Makada
 こんにちは。白山麓高専事務室の間加田 侑里です。
 2024年9月25日(水)、1年生による「ブックレビュー発表会」が開催されました。学生たちは夏休み中に読んだ本(ジャンルは自由)について、学んだことや感想を3分間発表しました。日本人の学生は英語の本を読み英語で発表し、留学生は日本語の本を読み日本語で発表しました。学生たちはファンタジーや冒険、伝記、推理小説など、多彩なジャンルの本を紹介しました。中には、PowerPointを使って発表する学生や、本のストーリーをアニメーション化する学生、さらには本の内容に沿ってボードゲームを作成して紹介する学生もいました。
 発表後、学生と教員による投票が行われ、「ベストプレゼンテーション」が選ばれました。英語での発表から2名、日本語での発表から1名が受賞者として選ばれました。結果は以下の通りです。

ベストプレゼンテーション(英語):中澤 円香さん

ベストプレゼンテーション(英語):万江 琴莉さん

ベストプレゼンテーション(日本語):パンタワット・ラパナンラットさん

間加田 侑里

 こんにちは、留学支援課の小沢 香澄です。本日はニュージーランドからの大切なお客様の来校に関してお伝えいたします。

 秋風が心地よく感じる2024年10月4日(金)、長きに渡り提携しているニュージーランド・国立オタゴポリテクニクからケリー・ホッジスン氏が来校しました。来校の目的は、留学予定の学生が充実した留学生活を送れるように、学生に関する情報共有および学生と直接面会することでした。オタゴポリテクニクとの交流は2002年より始まり、当初からホッジスン氏にはオタゴポリテクニクと本校の懸け橋役としてご尽力を賜っております。我々が心から信頼できるパートナーであるホッジスン氏に対して、感謝の気持ちと共に暖かく歓迎しました。

 オタゴポリテクニクはオークランド、クロムウェルとダニーデンにキャンパスがあり、現在本校の3年生は、本部のあるダニーデンで元気に留学生活を送っています。来年度は21名の学生が留学予定で、その為の準備が徐々に始まり、学生はこれから待ち受けている海外での生活に色々な思いを馳せています。そのような中、来年度留学生が直接ホッジスン氏と対面して話をすることで、ニュージーランド留学が現実味を帯びてきたことでしょう。ホッジスン氏は学生に挨拶をし、オタゴポリテクニクでの学びを歓迎すると共に、ニュージーランドやダニーデンの話をしてくださりました。その中で、オタゴ湾にて野生のペンギンやオットセイ、アホウドリを見ることができるという話をされた瞬間、学生の目がキラリと光ったように思えました。学生のダニーデンでのやりたい事リストに「美しい自然と共生する野生動物を目にすること」が記されたと思います。また「臆せず、積極的に色々なことに挑戦することが留学中は大切になる。」というホッジスン氏からの大切なメッセージは学生の心に届いているはずです。

 その後、カフェテリアに場所を移して、昼食を取りながらホッジスン氏を囲んで学生が数名ずつ話をする時間を設けました。積極的に質問をする学生は少なく、今後の課題とも思いました。忖度せずに自分の思いを率直に伝えたり、行動に移すことは留学成功への秘訣になります。今回のホッジスン氏の訪問で学生自身が思ったことや、感じたことを留学までの準備や留学生活に生かして欲しいと思います。

昼食を取りながら2年生と会話をするホッジスン氏

 我々はホッジスン氏の事を「日本人以上に日本人みたいな方」と賞賛しています。本校との交流を大切に、何事もホスピタリティの精神で真摯に対応して下さるホッジスン氏に対して、我々は心から信頼を置いています。これからも両校の懸け橋としてお世話になりつつ、より一層オタゴポリテクニクとの友好関係が深まるよう導いていただきたいと願っております。

小沢 香澄

白山麓の自然体験



 こんにちは!1年生担任でSTEM科目担当のブランドン・ウォルファースです。2024年9月20日(金)に行われた1、2年生の白山白川郷ホワイトロード遠足の様子をお届けします。白山白川郷ホワイトロードはここ白山麓では、夏から秋にかけて人気な観光スポットとして知られています。雄大な自然を感じたり、ハイキングをしたり、自然の中をドライブしたりと、さまざまな絶景写真スポットがある美しい道路です。当初の予定は、ホワイトロード沿いの森の中をハイキングするプランでしたが、雨の予報が出た為、バスツアーへ変更となりました。雨の予報にもかかわらず、当日は快晴でとても暑く、素晴らしい一日となりました。

 初めに、立ち寄った場所は石川県と岐阜県を隔てる山頂にある展望台でした。そこで学生たちは景色を眺めながら散策したり、岐阜県を見渡すことのできるブランコにのったり、売店に立ち寄りスナックを食べたりしました。壮大な自然を前に写真を撮ったりしながら、楽しく和やかな時間を過ごしました。

 その後はまたバスに乗り、滝へ向かいました。クラス写真も撮ったのでどうぞご覧ください!滝の前での短い滞在の後は、最後の目的地、自然保護センター中宮展示館へ向かいました。ここでは、白山の自然を見学する学生たちもいれば、近くの川へ行って遊んだり、石の上を歩き渡ったりして遊ぶ学生たちもいました。外に出たり川沿いで遊んだり学生たちはとても楽しんでいました。フィリップ・ケザウ先生は何人かの学生たちを水の中に誘い、川を歩いて渡りました。その後はバスに乗り学校への帰路に就きました。学生たちが毎日過ごすここ白山麓キャンパスがある自然の中での、楽しい朝の一時を過ごせた遠足でした。

ブランドン・ウォルファース

STEMフェアについて

みなさん、こんにちは。物理科目担当の伊藤 周です。今年もSTEMフェアが、1年生は2024年9月18日(水)、2年生は9月25日(水)に行われました。STEMフェアは国際高専の夏休みの課題として学生たちに課せられるSummer STEM Projectの成果発表の場として、毎年9月の中旬に行われます。平たく言えば夏の自由研究の発表会ですが、学生たちは英語のポスターを制作し、発表も英語で行うという、なかなかハードな行事です。海外の学校で行われる科学に関する学生たちの発表会であるサイエンスフェアのようなイメージで、ちょっとしたお祭りみたいな雰囲気でやれたらいいと考え、白山麓キャンパスの開校当初から始めました。

 昨年度は白山麓ジャーナルでSTEMフェアの生い立ち?やルールなどを紹介しましたので、今年は2年生の発表について総評したいと思います。
まず、今年度はようやく「海外英語研修」という、2年生の夏休みを利用した短期留学の科目が復活することができたので、7名の学生が夏休みを利用して海外に約3週間の語学研修に参加しました。約3週間というと、夏休み期間をほぼ全て使うため、流石にSTEM Projectを行うのは厳しいと考え、その学生たちにはSTEM Projectは免除しています。その代わりにSTEMフェアと同時に「海外英語研修成果報告会」を行い、同じようにプレゼンしました。ともかく、STEMフェアで発表する学生が減ってしまうので、少し心配していたのですが、そんな心配を吹き飛ばす発表を全員が見せてくれました。

 2年生にはプロポーザルを書く時点で、「何がしかのデータを取ること」を課していますが、みんなその趣旨を理解し、ポスターには表やグラフを載せてくれていました。個人的には、もう少し科学的な厳密さが欲しかった、とか、データをもっと細かく取れたらもっと良くなったのに、とか、英語の発表をもうちょっと頑張ったらいいのに、というような惜しかった点もある学生もいるのですが、全体的に非常に良くできていたと思います。

2年生の太田 光貴さん「リアウィングとダウンフォースの関係」について発表

2年生の太田 光貴さん「リアウィングとダウンフォースの関係」について発表

 今回特に感じたことは、自分の知らない分野だったりデータだったりを多くの学生が見せてくれたことです。おかげで興味深く全ての発表を聞くことができました。特にベストプレゼンテーションアワード1位を獲得した2年生の太田 光貴さんは自分で風洞実験の装置から作るという力の入れ具合で、素直に驚きました。ちなみに、太田 光貴さんは昨年も2位を獲得し、しかも兄である3年生の太田 晴喜さんもSTEMフェアでは1位を取り続けるSTEMフェア上位受賞の常連の兄弟です。
 また、2年生は昨年からの進化がすごい、ということも印象的でした。このSTEM Projectにどれくらい力を入れたか、どれくらいの時間をかけたか、ということは発表を聞けばすぐにわかりますが、昨年度の発表と比べると格段にクオリティアップしている学生が多かったです。課題慣れ、発表慣れしているいるからでもあり、そこは国際高専の教育が生きている部分だと感じました。

 

 毎回書いているかもしれませんが、私自身はぶっちゃけ指導らしい指導はほとんどしていません。しかし、学生の頑張りと先生方のサポートでSTEMフェアは国際高専の名物イベントになったと思っています。学生の人数が増えると発表の仕方も変える必要が出てくるかもしれませんし、先生方の負担も増えてくるのですが、私は学生たちのユニークなプロジェクトが大好きなので、継続して行っていければと思います。今後は白山麓キャンパスの一部の教職員だけでなく、学生に関わる全ての方々にも来ていただけれるようにできればと考えています。(学生たちは嫌がるかもしれませんが)

伊藤 周

HOME学生生活ICTジャーナル

PAGETOP