芭蕉は、350年ほど前の7月13日に『 閑さや 岩にしみ入る 蝉の声 』と詠んだそうですが、今年の夏は温暖化の影響で、7月に入っても蝉が鳴かないと各地でニュースになっていました。そこから一か月、日本はまだまだ厳しい暑さかと思います。みなさま、いかがお過ごしでしょうか。地球の反対側から、国際理工学科3年の鴨下 麟太郎です。ニュージーランドに住む我々の生活は、そんな日本とは非常に対照的で、暖炉にて薪を燃やし、寒さをしのぐ毎日です。今回は、そんなニュージーランドの日常の中でも、国際高専サブカルチャー担当の僕の、非日常な日常を紹介していこうと思います。
みなさんがそうでないことは重々承知ですが、基本的に、僕の一日は数学の問題を解くことに始まり、数学の問題を解くことで終わります。国際高専にいるうちは、ロボコン(それが理由の大半ですが)や課題に追われ、祝日にしか解く時間はありませんでした。しかし、ニュージーランドに来ると、生活は一変しました。端的に言えば、一日に24時間を超える自由時間を手に入れることができたのです。これにより、夜、大体2~3時間ほど数学の勉強をして、それ関連の問題を1問選び、その問題を次の日の朝に解くという、どこかにありそうな勉強法のような生活を送れるようになったのです。ニュージーランドに着いてから、生活の中で数学のことを考えられる時間というのはすごく増えました。休日によくオタゴポリテクニクに行き、ホワイトボードに問題と解答プロセスを記載し、残したまま帰るという、さながらホームズの『踊る人形』のような形で、数学好きにのみ伝わる暗号を作っていたのですが、つい先日、数学の先生がその問題を見たようで、その話で盛り上がることができました。数学は言語だという人もいますが、まさに数学という言語で、コミュニケーションの漸近線を越えた瞬間でした。
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Sharing a great moment with Mark Harmer, the inspiring math lecturer at Otago Polytechnic — we really hit it off!意気投合した、オタゴポリテクニクの数学担当教員、Mark Harmer先生と共に
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A holiday spent with classmates, playing with an unsolvable expression — all that remains is a trace of our battle, like a dream. とある休日にて、クラスメイトと、解けない数式で遊んだ、”兵どもが、夢の跡”
サブカル担当と言っておきながら、ここまで数学の話しかしていないので、ここからは僕のダニーデンでのカードゲームライフについてご紹介していきます。
まず初めに、ニュージーランドにはカードをバラ売りしているお店がありません。「知らねぇよ」と思うかもしれませんが、これはカードゲーマーにとっては、死刑宣告に限りなく近い事実なのです。そのうえ、ダニーデンにはカードショップが1つしかありません。そのため、僕は5歳の頃から数えて、おそらく初めて、「カードゲームをしない月」を3か月過ごすことになります。
しかし、7月中旬、転機は訪れます。ある土曜日のことでした。その日はスケートをしに、友人と南部のスケートリンクに遊びに行っていました。その帰り道、たまたま見かけたそのカードショップの看板が、日本の有名なキャラクターだったのです。思わず目に留め、中に入ってそのカードゲームの商品を物色していると、店主さんが僕に話しかけてきてくれました。店主さんと話していると、毎週日曜日に大会が行われていることを教えてくれました。翌日、友人と共にその大会に参加し、人生初のカードゲーム国際交流ができました。
そこで、一つ驚きの事実が発覚しました。ニュージーランド人は、基本的に自由で、日本人とはベクトルの違う、言うなれば、「海外の人」の雰囲気がありますが、カードゲームコミュニティは、日本と全く変わりませんでした。周りと比べ強すぎるデッキを使えば嫌がられ、事故(運が悪く、目に見えて負けていること)った人には攻撃しないでおこうというような配慮などが見られ、インターネットでしばしば見かける、日本人と発言一致な「海外ニキ」は、日本人の仕込みではないことが分かりました。
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A refreshing smile after a joyful day with friends and new local faces.友人と共に、初対面の現地人と遊びまくった日の清々しい笑顔
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At the counter of a card shop. カードショップのカウンター
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A packed play area full of 活気づく店内
ここまで、僕のニュージーランド生活についてお話してきましたが、最後に、このジャーナルを読んでいる白山麓キャンパスの学生や、入学を考えている中学生に向けて、メッセージを伝えて終わりにしたいと思います。このジャーナルを通して、僕が伝えたいのは、「英語能力は問われない」ということです。…盛りました。「コミュニケーション能力の方が重要だ」ということです。
僕は、電子ゲームやスポーツなど、人とつながれる定番の趣味を持っていません。しかも、若者と喋るのが好きではないという最悪のハンデを抱えています。それでも、日本で培った、先生と喋る技術とカードゲームで喋る技術で戦うことができています。この二つは、僕の言葉に耳を傾けてくれる瞬間が、自動的に訪れるという、すごくありがたい性質を持っています。みなさんもニュージーランドに来る前に、ニュージーランドでどうやって英語のコミュニケーションを取るかの戦略は立てた方がいいと思います。僕は日本人の家にホームステイしていて、英語を日常的には用いらないのですが、他の学生と比べても、英語に触れる頻度は変わりません。これは戦略勝ちとしか言いようがないです。ダニーデンは間違いなく、素晴らしい環境です。だからこそ、日本に帰りたいという欲望と見知らぬ天井との苦闘ではなく、「自分の成長の場」として捉えてほしいと思っています。
P.S. 信州人なので、本当は小林一茶にしたかったです。
鴨下 麟太郎
こんにちは。3年の中澤 琉月です。現在、ニュージーランドは真冬で、日本の1月ごろと同じような寒さを感じます。そのため、外ではダウンなどの上着が欠かせません。今回は、そんなニュージーランドでの私の日常を少しご紹介します。
私が滞在しているホームステイ先には、ホストマザー、ホストファザー、同年代のホストシスター2人がいます。滞在当初はハウスメイトが2人いましたが、そのうちの1人は最近帰国しました。そのハウスメイトとは共通点が多く、短い間でもとても仲良くなることができました。ホストファミリーとは毎日たくさん話すわけではありませんが、みんなユーモアがあって、リビングで一緒に過ごしているだけで思わず笑ってしまうようなことがよく起こります。また、家には大型犬が1匹いて、よく一緒に遊んでいます。

My host family‘s dogホストファミリーが飼っている犬
家は少し高台にあり、リビングからは海まで見渡せる広大な景色を楽しめます。オーロラが出た夜にはベランダからその幻想的な光景を一望することもできました。さらに、ダンスフロアが敷かれたガレージや電子ピアノもあり、自分の趣味であるダンスやピアノを存分に楽しめる、まさに私にぴったりな環境です。

The aurora seen from the balconyベランダから見えたオーロラ
こちらでの授業数は1・2年のときよりも少なく休日も多いため、より自由な時間が増えました。そのおかげで、ピアノやダンス、絵などの趣味にたっぷりと取り組めています。ダンスについては、オタゴポリテクニク内のクラブにも入り、毎週のレッスンでスキルを磨いています。ほかにもAIについてのオンラインコースを受講するなど、自分の興味を深めることにも時間を使うようにしています。
また、自然豊かなニュージーランドならではの楽しみとして、トレッキングにもよく出かけています。ダニーデンには行政が整備したコースが多く、市のサイトを見て場所を選んでいます。場所によって異なる景色や日本では見かけない植物に出会え、とても面白いです。犬好きの私にとって、道で出会う散歩中の犬たちも癒しの存在です。
穏やかで充実した日々を送る一方で、悩みもあります。それは英語力、特にスピーキングについてです。英語に囲まれた環境には慣れてきたものの、自信のなさから自分から話すことにまだ苦手意識があります。
留学生活も3分の1が過ぎました。ホストファミリーに囲まれた温かい環境と、自由に使える時間を活かして、これからも少しずつ挑戦を重ね、自分の成長につなげていきたいと思います。
中澤 琉月
こんにちは。ハヤト・オガワです。白山麓キャンパスで、エンジニアリングデザインⅡA(2年生)とコンピュータスキルズⅡA(2年生)の授業を教えています。AIや未来をテーマにした映画が好きな私にとって、1968年公開の映画「2001年宇宙の旅」(原題:2001: A Space Odyssey)のような作品では、テクノロジーがどのように想像され、そして時に脅威として描かれている様子を見ることはとても興味深いです。AIをただ恐れるのではなく、その仕組みを理解し、責任を持って制御する方法を一緒に学んでみませんか。
JetBotプロジェクトが2年生のコンピュータースキルズの授業に導入されてから数年が経ちましたが、この実践的な活動はICTのカリキュラムの重要な一部となっています。時間が経つ中で、ハードウェアの故障や操作中の落下事故により、いくつかのJetBot が使えなくなることもありましたが、このプロジェクトは今でもロボティクスと人工知能の学びとして貴重な体験となっています。
実践を通じて学ぶ:Pythonから衝突回避まで
NVIDIA Jetson Nanoマイクロコンピューターを基盤とするJetBotプラットフォームは、学生がAIを活用したロボティクスの実践的な学びの入門に適しています。学生はまず、ロボットを制御するための基本的なPythonプログラミングを学び、次に画像収集を通じてデータセットを作成し、最終的に衝突回避モデルの開発に取り組みます。搭載されたカメラを活用しながら、各学生は自分のJetBotを障害物コースで安全に走行させるための訓練を行い、理論的な知識と実践的なスキルの両方を応用して、データセットやモデルの品質が動作にどのような影響を与えるかを理解していきます。
この活動は、長年にわたり学生たちのAIやロボティクスに対する理解を深めるだけでなく、高品質なデータの重要性、慎重に問題を解決する力、そしてシステムの信頼性の大切さについても学ぶきっかけになっています。こうしたスキルは、将来エンジニアリングやテクノロジーの分野で活躍するうえで不可欠なものです。AI技術が主流になりつつある今、将来的に、自動運転車などの分野で働く学生も出てくるかもしれません。そうした分野では、精度やデータの完全性が実際の社会に直接影響を与えるのです。
挑戦を乗り越え、成長へとつなげる
JetBotの公式ドキュメントやプログラミング教材は大学レベルの英語で書かれているため、それを理解するために英語力が必要なことが課題となっています。しかし、教員とラーニングメンターによる継続的なサポートと指導により、学生たちは言語の壁を乗り越えながら、技術・学術的なスキルの両方を身につけています。
一部のJetBotsは修理が必要とある場面もありましたが、どの出来事も貴重な学びの機会となり、実際のハードウェアを扱うことの現場を体験することにつながりました。このJetBotプロジェクトは、プログラミング、人工知能、そして実践的なトラブル対応力を融合させた、実践的かつ学際的な教育プログラムとして、進化を続けています。ICTは、学生たちが現代の技術社会で活躍できるよう、確かな力を育む取り組みをこれからも続けていきます。
ハヤト・オガワ
こんにちは。国際高専1年生の樋口 洸太朗です。先日アメリカのミズーリ州から5人の高校生が私たちがいる白山麓キャンパスに訪れました。今回は僕がバディとして共に生活したアイザック君との思い出を書こうと思います。
私が初めて彼と会ったのは白山麓キャンパス受け入れ初日の2025年6月7日(土)の夜です。彼の第一印象としては、背が高くて大人びていて、本当に高校生かと疑いたくなるような外見と雰囲気を醸し出していました。しかしいざ話してみると、彼は日本の文化に興味があるようで、私たちが学校について説明しているときも前のめりになって聞いてくれたり、積極的に質問したりしてくれました。
意外にも早く打ち解けられて安心した次の日、私たちは金沢へ観光に行きました。アイザック君は行き帰りのバスの中で目に付く日本の風景や物事に興味津々で、水田に生えている稲をみて綺麗と言ったり、日本とアメリカの学校生活の違いについて話したりして盛り上がりました。金沢では金沢城の敵を苦しめる設計やからくりを見て「攻めるのが難しい城だね」と言っていて、面白い視点だなと思い感心しました。観光の終盤では日本の食べ物に夢中で、金沢でお団子を食べたりセブンイレブンでおにぎりやお菓子を大量に買ったりしていました。
それからは平日に授業を一緒に受けたり、放課後にバスケットボールやアメリカンフットボールをして残りの生活を充実したものにできました。連絡先も交換したので、またどこかで会いたいです。
樋口 洸太朗
こんにちは。白山麓高専事務室の間加田 侑里です。今回は、1年生の笹木 大暉さんがAutodesk Fusionを用いて制作した作品を紹介します。
「コンピュータスキルズⅠA(1年生)」の授業では、1年生が入学した直後からAutodesk Fusionを活用した3Dモデリング制作に取り組みます。この授業では、エンジニアにとって必要なコンピュータの基本的なスキルを学習します。笹木さんは、授業で学んだことをもとに、2ヶ月間かけて「V8エンジン」の3Dモデル制作に挑戦しました!その様子を動画で紹介します。どうぞご覧ください!
間加田 侑里